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図版が豊富に追加されており、文章などもかなり書き直されている。表紙から本文まですべて今田さんの手によるデザイン。ページメーカーを使用したそうだ。本文書体は標準的なものしか使用できず、多少の不満はあったらしい。WEBではパソコン画面に表示される横組みの文章だが、縦組みの本を開いて読む文章は随分印象が変わる。書体もまったく違うので当たり前のことだが。
そして私の好きなソフトカバー(寝転がって読むのに都合がいい)。本文用紙の厚さ、紙質や色も、文字モノに適したものが用いられている。オンデマンド印刷(出版?)ということで、注文が来てから印刷し製本する(2〜3部は在庫してるかもしれないが)システムなので、自由に紙質やインクを選んだすることはできない。これらは仕様ということだが、以外と良くできている。
本の内容に興味のある人は彼のWEBで確認してもらうとして、私が一番興味を持ったのは、この本を自費出版するコストだ。彼の執筆や図版作成・資料収集・デザインなどの労力コストを除外すると、1万数千円しか払っていないのだという。そしてあとはデータ管理料が月に200円かかるだけなのだ。これだけの費用で、全国の書店から注文できる本が出版できてしまうのはすごい。
ごく小部数しか発行されない専門書などは、異常な高価格になってしまう現状の出版界。自費出版したいが、費用と流通の問題で悩んでいる人たち。絶版本を低費用で復刻したい出版社(本来これが目的でこのシステムが作られたようだ)。…それぞれの問題がこのシステムをうまく利用することで何とか解決できてしまう。世の中、変わっていくのだ。もちろんみ〜んなフォントの業界にも当てはまることだが。
この本はオンラインで注文することもできるのだが、手数料や配送料が多少かかる。私は本体価格と消費税だけで済む書店で、今月5日に注文した。…が、このシステムが動き始めたばかりということで注文がうまく通らず(現在は大丈夫のよう)、12日オンライン注文。代引配送によって19日、この本を手にすることができた。タイプフェイス・デザインの基本的な事柄について、うまくまとめられた判りやすい内容だと思う。通常の印刷用インクでなくトナーのプリントに近い本文印刷だが、活版印刷のように文字が若干太り気味で黒っぽく読みやすい。また紙面を触ると文字部分に微妙な凸凹が感じられ趣がある(活版とは逆の凹凸だが)。今年中に発行予定という「タイプフェイス・デザイン漫遊」「タイプフェイス・デザイン探訪」の2冊にも期待したい(06/19に文章追加しました)。
PODタイプフェイス・デザイン事始
著者:今田欣一
発行:欣喜堂
発売:ブッキング
価格:2000円+消費税
ISBN:4-8354-7001-X
オンラインでの注文はこちら
どこかのフォントベンダーが、ロゴラインを販売する準備をしていれば幸いなのだが…。
*↓その後の2001年12月、ロゴラインはOpenTypeフォントとしてリリースされました。
http://www.adobe.co.jp/products/type/kamonokana.html
和文フォントガイドブック for Macintosh
雑誌コード63856-08 定価3048円
玄光社 03-3263-3511
最近あちこちで、「パソコンの文字がたりない」とか「このOSならこんなに沢山の文字が使える」とパソコンで使える文字種を増やそうという傾向が感じられる。
現在JIS X 0208を基にした7〜8,000程度の文字が殆どのパソコンで使われているが、機種依存文字 の文字化け問題はまったく解決されていない。
使える文字が17,000に増えたときに文字化け問題は解決できるのか。Unicodeに準拠し表示や印刷が可能ということだが、作成した文書が他機種・他OS・通信環境などによって文字化けすることはないのだろうか。Unicodeだから大丈夫なのだろうか。
なるべく多くの人が文字を利用できるように、
「従来、わが國において用いられる漢字は、その数がはなはだ多く、その用いかたも複雑であるために、教育上また社会生活上、多くの不便があつた」昭和21年11月16日 内閣訓令第七号より
と当用漢字(1,850字)が制定されたのだが、いつの間にか使用する漢字字種は増えてきているのだ。
多くの人と確実に情報交換するには、できるだけ平易な文字管理システムが望ましいのではないのか。価値のある情報とは、難しい漢字や熟語を使うことではなく、わかりやすく間違いなく伝えることではないのか。
もちろん特殊な専門分野で、足りない文字があるのは事実だと思うが、それはその分野ごとに文字種を決めたり専用フォントを作成して運用すればいい。膨大な文字数をOSの標準にして、必要のない人に負担をかけたり、混乱を招くようなことは避けて欲しいと個人的に思う。
文字数を増やすことが素晴らしいことだと単純に思い込んでいる人達…。頭がいいんだか悪いんだか。前へ前へと進む前に、せめて文字入力時に
「いま入力しようとする文字は、このパソコン以外の環境では正しく表示されない可能性があります」
というメッセージぐらい表示して欲しい。一番大切な部分を手抜きしたまま字種を増やしても、不便で迷惑な機種依存文字が、さらに1万字ぐらい増えるだけのことだ。
私がいくらこんなことを書いても、パソコン上の文字数が増えれば、その分の制作作業量が増えることに困惑している書体デザイナーのグチにしか、彼らには聞こえないと思うけど…。
●書体デザイナーがフォントデータをエンドユーザーに販売する
農業の方達が消費者から直接注文を受けて、作物を個別に発送するのと同じだ。作者は、中間業者・流通システム・販売会社などの意向を気にすることなく、信念に基づいた制作が可能になる。そして、その信念と品質に同意した消費者が注文購入するのだ。農業の場合は宅配便の発達でこのような商いが可能になったわけだが、デジタルフォントの場合はインターネットがデータを送り、代金を回収してくれる。
本当なら自分のWEB内で代金の回収までやればいいのだが、個人でそんなことをやっていたら書体をデザインする時間が無くなってしまうし、インターネットでの個人同士のお金のやり取りは双方ともに煩わしい。いくつかの代金決済システムを検討したが、私が選んだのはVectorのSoftショップ・プロレジだ。
基本的にはクレジットカードによる決済なので、海外在住の方も支払いが可能になる。実は海外在住の方達は日本語フォントの購入に困っているらしく、結構そんなコメントが寄せられる。
●5回までフォントをダウンロードできるシステム
店頭で販売するパッケージなら、フォントデータを間違って消してしまってもCD-ROMから再度インストールすればいいのだが、ダウンロード販売の場合は購入者が自分でデータを何らかのメディアに保存しておかなければならない。しかし、保存しておかないまま無料頒布版を消してしまい(タダだからあっさりと)再登録する人は結構多く、自分でオンライン決済していたらこの問題に頭を悩ますだろう。VectorのSoftショップには何種かのダウンロード方法があるのだが、私は同一人物が5回までダウンロードできる方法を選んだ。将来フォントデータがバージョンアップしたときに、残り回数があれば、それを無料でダウンロードできるようにする予定でいる。
カードによるオンライン決済がどうしても信頼できないという方には、近所のコンビニエンスストアを利用して現金で決済する方法も用意されてる。
興味のあるフォントを無料で入手し、品質や雰囲気、使い勝手を確かめてから、商品版を購入するというフォント販売システムが浸透し、同じように行動する仲間が増えれば面白い。
価格については何年か前から、総合フォントを音楽CDのアルバムに近い価格で売りたいと考えていた。カナとか欧文だけのフォントだったらシングルCD程度の価格と…。
無料頒布版で登録してもらったメールアドレスに商品版の案内を送ったのだが、約25%が宛先不明で戻ってきてしまった。2年も時が過ぎればアドレスを変更する人がこんなにいるのだ。商品版完成の情報を1000名もの人に伝えられなかった。次の書体では、無料版と商品版を同時にリリースすることにした。
●キャパニト-L(TrueType)
JIS X 0208-1997に基づいた全漢字字種が使用できます
本体価格 3000円
消費税 150円
手数料 100円
消費税 5円
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合計必要額 3255円
・無料頒布版の申し込み
・株式会社ベクター概要
・Vectorトップページ
・Vector Softショップ・プロレジページ
・Vector Softショップ利用者マニュアル
・Vectorお支払い方法
・キャパニト-L(Mac用)の購入申し込み
・キャパニト-L(Win用)の購入申し込み
和文部門
●金 賞 七種泰史(日本)
●銀 賞 リン・スー・ファン・エリザ(中国)
●銅 賞 秋葉英雄(日本)
●審査員賞
・田中一光賞 ホン・シー・ハン・アレン(中国)
・勝井三雄賞 西尾実弥(日本)
・アラン・チャン賞 七種泰史(日本)
・小塚昌彦賞 朱志偉(中国)
・森澤嘉昭賞 王峰(中国)
●佳 作 布施正(日本)
榎涼子(日本)
ヨアヒム・ミュラー・ランセイ(アメリカ)
欧文部門
●金 賞 ロイ・プレストン(イギリス)
●銀 賞 リニア・ランドクイスト(アメリカ)
●銅 賞 鴨野実(日本)
●審査員賞
・マシュー・カーター賞 グレゴリイ・ビンセンス(フランス)
・フレッド・ブレイディ賞 大庭三紀(日本)
・五十嵐威暢賞 ヨアヒム・ミュラー・ランセイ(アメリカ)
・森澤嘉昭賞 深川渉(日本)
●佳 作 ティモシー・ドナルドソン(イギリス)
ヨヴィカ・ヴァイロヴィッチ(ドイツ)
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会場 モリサワ・タイポグラフィ・スペース
〒162東京都新宿区下宮比町2-27モリサワビル1F
TEL 03-3267-1233 FAX 03-3267-1536
会期 2000年1月11日(火)〜2月29日(火)
休館 日曜、祝日
開館 午前10時〜午後6時 入場無料
交通 JR/地下鉄東西線・有楽町線・南北線
『飯田橋』駅(地下鉄出口B1)より徒歩3分
【白舟書体】
http://www4.jcss.net/~hakusyu/
もうひとつ心配なのは、このような制度を作っても、継続していかなくては意味がないということです。登録料金をとって書体を掲載し刊行物を発行するわけですが、将来1年に1点しか新規登録がなかった場合でも定期的に発行できるのでしょうか?
過去に日本規格協会の文字フォント開発・普及センターが同じような主旨で発行したフォントライブラリーカタログが、数年しか継続しなかった例があります。結構高い登録料を払った私にとって、とてもイヤな思い出です。
登録を希望する方は日本タイポグラフィ協会へ。
応募締め切りが1か月ほど延期されたようです。
【ANITO アニトあるいはアニート】Macintosh用のアニトが発売されて3年後の1997年、アニト書体は、L・M・インライン・レリーフと4種類のフォントになって、フォントワークスから発売されました。そして L・Mに続く次のウエイトのアニト書体の制作が現在進められています。
タガログ語の精霊、祖霊。身近な霊的存在として、スペインによる侵略を受ける前にフィリピンで広く信仰されていた。広い意味では自然のあらゆるものに宿る霊的および超自然的な存在のこと。…緑の精気、月の知恵…
太陽のエネルギーを受け、ジャングルの緑の精気から誕生し、
月から知恵を授かったアニト。
色は黒く、手足はたくましく、万能の英知に溢れ、
光の矢に乗って行動するアニトは、弱いものを助け、勇気を与えてくれる。
助けを求めれば、いつでも、どこにいても、駆けつけてきてくれる。
海辺に暮らし森に生きる者にとって掛け替えのない存在だったアニトだが、
最近は田舎にひきこんだままのようだ。
おじいさん、おばあさんの心に今も残るアニト。
どうか再び力強い姿を現しておくれ。
(フィリピンに語り継がれている昔話より)
Mac OS標準のPostScriptプリンタードライバーである「LaserWriter」を使えば日本語フォント(TrueType)の埋め込みが一見成功したように見えるが、エンコーディングなど文字情報の一部が失われているため、2バイト文字が正しく検索されないなどの障害が残る。という情報があったきりだ。この方法でなんとか埋め込みだけは実現したような気にはなるが、やはり満足できない。埋め込み可能な日本語TrueTypeフォント(キャパニトL-教漢)を配布している私としてもね……。
●埋め込み可能なTrueTypeでレイアウトを行う。というものだ。Macintoshユーザは、このPDFファイル(日本語TrueType埋め込みサンプル106K)をダウンロードして、画面表示やプリント結果をぜひ体験してほしい(現在は当サイト内の日本語フォント無料頒布のページにもフォント埋め込みPDFがあります)。
●レイアウトしたデータをPDFに変換する。
●変換したデータをAcrobatで開く。
●TouchUpツールでTrueTypeの部分を選択(一部分だけでOK)。
●ツールメニューから[TouchUp]の[テキストの属性]を表示。
●[埋め込み]にチェックを入れると埋め込まれる。
●PDFを保存。
この作業に使っていたマシンは中古の Macintosh Plus、当然モニタは白黒の9インチ。RAMは目一杯増設してもたったの8M。アクセラレーターを増設し、内部温度を下げるためのファンを上部に取付けた。このマシンには内蔵HDなどというものは存在しなかったので、これまた中古で買った20M(!信じられる?)の外付けHDをつないでいた。
契約書に指定された締切の日時に追われながら、そんなこんなでなんとかキレイなアウトライン状態になったアニトのデータは、1区94文字できあがるたびにフロッピーディスクでF社に渡されていきました。そして1992年に某毛筆系ソフトウェアにバンドルされ出荷が始まります。まだ業界に丸ゴシック系フォントが殆どない状態だったので評判は悪くなく、1993年には同じ会社から発売された日本語フォントだけのパッケージにもアニト書体は加えられました。
どちらのパッケージも DOS やWindows 用のフォントでしたが、TrueType や PSfont ではなく、それ以前の特殊なフォーマットのフォントデータでした。
その後、さまざまな部分に微修整処理を重ねたアニト書体(現在のL)が完成したのは1993年秋頃。そのデータを日本情報科学(現ニィス)に提供し、Macintosh で作った、Macintosh のためのアウトラインフォントが発売されたのは翌1994年。制作開始から丸5年の月日が過ぎていた。佐藤と成澤がこの時、どこで祝杯を酌み交わしたか記憶が定かではないが、両人は休む間もなく、このデータを基本にアニト書体のファミリー作りに突入していくのだった。