自主開発したが、結局は日の目を見られなかった書体を紹介するページ



スーパーヘッター漢字書体(1998.06~2001.11)

第11回石井賞で3位になった書体を発展させて、太さも複数ある書体を考えた。
1994年に停止してしまったキャピー漢字の制作方法を元に、フォント作成専用アプリ「Fontographer」のComponent(参照 or リファレンス)機能を利用した、新しい方法で約7000字を制作した。

一番細いウェイト(上の画像)から制作を始めたが、この書体も完成させられず、日本語フォント化することはなかった。
しかし、ここで蓄積したノウハウを生かして、後に9種類の太さを持つ「ルイカ」書体を完成させることができた。



キャピー漢字書体(1991.01~1994.12)(途中で中断…)

当初は中心線だけで第1水準漢字まで作った(英数字も)。
しかし、日本語書体の漢字数は多く、制作にかかるエネルギーは膨大だ。
そこで、なるべく少ないエネルギーで日本語書体の制作ができるように、漢字を部首別に分類(デザイン重視)し、数年かけて独自にカード1440枚のデータベース(漢字分類事典)を作った(HyperCardというアプリ使用)。
そのデータベースを利用して、かな書体キャピーの漢字を作り始めたのが1992年。
たとえば、偏や旁の幅の最大と最小を決め、アウトライン化した中間の幅の偏や旁をアプリで生成しておく。
それらの部首を組み合わせて1つの漢字を作るのだ。

制作には、Illustratorというグラフィックアプリを使用していた。
1文字の中身は、番号で識別された複数の部品で作られている(参考画像)。
この方法では、それほど効率が上がりそうもなかったので、1994年末に作業停止し、次の方法を考えることにした。


いかづち書体(1995~1997.08)(満足いかず…)

あられ書体の兄弟分として企画し、あられと同様の方法で制作…。
じつは、雨かんむり3兄弟として「あられ(霰)・いかづち(雷)・みぞれ(霙)」と、3つの書体を考えていた。
いちおう第2水準漢字までパソコンを使って約7000字を作成した。1996年頃はこんな感じ…
しかし、商品として販売できるレベルの魅力が感じられず、これまで公表してこなかった。
1997年4月から本気で漢字のレベルアップ作業を始めたが、なんだか「あられ書体」の太いやつって感じにしかならず、8月にJIS28区まで終わらせたところで停止…。

ちなみに「みぞれ(霙)」書体のデザインは固まっているのだが、私のエネルギーが切れているので、たぶん制作しないと思う…(2022年、みぞれ・みぞれ墨東書体を完成させ頒布開始した)。



21世紀書体(1987.07~)(途中で中断し完成せず)

画線の端を水平垂直に処理したニタラゴと組み合わせて使える漢字書体を目指した…。
これがアイデアスケッチ。各部首のデザインを確認。鉛筆で小さく描いたラフスケッチ
ロゴ入りの用紙まで用意して制作をはじめたが、すぐに中断したようだ…。

画線の位置や長さを数値で統一すれば文字がきれいに並ぶんじゃないかと、愚かなことを考えて失敗した例。
日本語書体のデザインは、そんな単純なことではないのがよく分かった…。



電子タイプライター用書体(1985)(採用ならず)

当時のCanonのカメラに刻印されていた英字ロゴのCをヒントにデザインした、電子タイプライター用の欧文書体。
この時代、キヤノンは電子タイプライターを販売していた。
このような回転する円盤状の活字を使用し、書体変更するにはその円盤を交換する方式。
しかし、キヤノンはオリジナルの欧文書体を保有していなかったので、私がこの書体を提案した。

タイプライター用の欧文書体ということで、上記画像の文字しかデザインしていない。
原図は天地35mmで手描きした(上の画像)。字幅は等幅ではなく、プロポーショナルなデザイン。
各文字の側に記された数字は、文字幅を表している。
提出用の文章見本を作成するために、写植文字盤を作って印字した。



欧文書体 GARAXY(1982~)(採用ならず)

Paper Clipが簡単に商品化されたあと、次は本文にも使える本格的なものを…と、1982年頃から「GALAXY」という書体名でデザインを始め、アメリカやイギリスの会社に何度もプレゼンしたが採用されなかった。
どうしてもこの書体を諦め切れず、大幅にデザイン変更し名称を「Lotus」に変えて、1987年モリサワ賞欧文部門出品したら2位を受賞した…。
これは→デザイン変更途中の状態。太さは「Lotus medium」になっているが「a」「&」などの形は、GARAXYの雰囲気が強く残っている。

当時は「Eras」という欧文書体が好きだったので、かなり影響されている。
手描きで輪郭線を修正し続け、本人が気づかないうちに形が歪んでいった悲しい書体。

●トップページへ