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1996/07/04〜08/22
毎年、編集委員が変わる度に内容も変化しますが、大体は特集記事をメインに構成されています。
今年1月からの特集内容は、以下の通り。
1月
文字の森(三木 健)
2月
NEW FACE(年鑑に応募されたロゴやシンボルの掲載)
3月
タイポグラフィによる21世紀へのメッセージ(杉崎真之助)
4月
都市景観をつくるアートワーク(菊竹 雪)
5月
列島リレーファイル(会員による寄稿)
6月
NEW FACE(最新のロゴやシンボルの掲載)
7月
知的所有権(協会内知的所有権委員会)
8月
タイポキーワード(専門用語の最新解説)
その他、コラム記事や協会議事録などと、写植機メーカー(という言い方は古いか?)3社の広告が掲載されています。
モリサワやリョービの広告はティー誌用に独自の企画で制作されていて、時には特集ページより中身が濃く感じられる場合もあります。
いまのところタイポグラフィに関する定期刊行物がこれ以外見当たらないので、かなり貴重な月刊誌だと思います。
店頭での販売は殆どされていませんので、購読希望者は下記事務局へ申し込んでください。
〒103
日本タイポグラフィ協会事務局
東京都中央区日本橋本町1-7-10
03-3246-2900
正式な書体名は「JTCナミキ筆順」。
JTCナミキ教科書体の漢字部分を筆順どうりに表示するらしい。
目的の文字をタイプすると、筆順どうりにアニメーションするのか?これは面白そうだと思いインストール作業に入った。
このメーカーのATM用フォントは、システムフォルダにドラッグすればOKなので、すぐに完了。さあ、どんなふうに表示されるのかとタイプしたが、思ったように文字が入力できない。
たとえば「南」と入力したら「話」という文字が表示されてしまった。何度やっても、他の文字を入力しても同じような結果だ。
あわてて筆順データ入力方法という添付書類を見ると、入力方法は以下の3種類が用意されていた。
●この書体専用の区点コード表を参照して、漢字とそれを構成する点や画を調べ、コード入力。3番目の方法を選び、再度入力に挑戦。フォント指定をJTCナミキ筆順にし「みなみ」と入力、変換処理すると候補文字の中に「探旦歎淡湛炭短端箪」と何やら恐ろしい文字列があらわれた。これを確定するとやっと出ました。南の筆順が…(参考に東西南北の4文字の筆順表示)●ことえりやATOK8などの日本語入力システムを使用し、文字パレット表で「JTCナミキかきじゅん」書体を指定することにより、点や画を入力。
●ことえり、ATOK8、EGBridgeのどれかを使用し、これらの各日本語入力システム用の辞書ファイルをシステムへインストールし、通常の文字入力と変換操作により、筆順を表示。
10画数の文字は、1文字を筆順どおりに10個のキャラクタにわけてフォントにし、その10文字を漢字変換辞書に登録してあるのか…。
筆順どうりに文字が並んでもちっとも面白くないですね。なんに使うんでしょう?このフォント。
利用が考えられるのは、教育用の出版物、あとはこのデータをアニメ化して筆順修得ソフトや筆順あてゲームソフトなどですかね… どなたか面白い利用方法を見つけてあげてください…
●製品の情報
現在、小学校1〜2年生用の「JTCナミキ筆順-1」と小学校3〜4年生用の「JTCナミキ筆順-2」が販売されている。私が試用したのはMac用だが、Windows用もあったような気がする。
企画・開発 日本情報科学
03-3814-3201
発 売 元 エセルテジャパン
03-5721-1644
石井賞 重野 憲一
優しく爽やかに生き生きとしたひびきをデザインした。
2位 多田 信之
本文縦組専用書体として設計した。和様の鋭さ、日本刀・菖蒲の葉。鋭い中にも決して硬直する事のない柔らかい流れ。こうしたイメージを託しつつ連綿のリズムを表現する為、字面を長体に揃えてハライ先を長く見せるようにし、特に右ハライを逆ぞりにする事により下方向への視線の流れを意識した。緊張感としなやかなリズムを合わせ持った知的な書体になったのではないか。
3位 今田 欣一
最近は、さらりとした感じの気楽な書体が多い。感覚的には面白いのかもしれないが、タイプフェイスとしては寂しい気がする。そんな思いから、奇をてらわない正統的なタイプフェイスデザインに挑戦することにした。一見、ごく普通の楷書である。自分の筆跡を基にして、フェルトペンで書いてみた。毛筆やペン字とは異なる、現代的で透明感のあふれる雰囲気になったと思う。前回から、パソコンを使って制作するようになった。だが、文字は人間の肉体から産み出されるのだということを決して忘れてはならない。
3位 重野 憲一
優しく爽やかに生き生きとしたひびきをデザインした。
3位 七種 泰史
活字であっても、ぬくもりのある文字を目指して制作した。エレメントは直線で構成したが、フリーハンドにすることで、やわらかさ、親しみやすさを出した。さらに文字を部分的に続けることでリズミカルな動き、エレメントが交差する部分に墨だまりを作ることにより、ぬくもりを強調した。
3位 中村 幹夫
第10回佳作作品を練り直した。今までに無い勢いを持った書体、文字そのものが活きている・動いている・見るものに強い刺激を与える書体をめざしてデザインした。従来の筆法ではダメだ、あたり前の字になってしまう。特に漢字は画数が多いので、どうしても平凡になってしまう…。そこで、「かすれ」はそのままで、ハネ、ハライ、ノバシすべてを従来の常識の逆を考え、打ち込みや点はできるだけダイナミックに爆発する形にした。何度も何度も練り直し、ようやくこの形にまとまった。荒削りではあるが、強烈な個性を持った今までに無い書体である。
もっと詳細が知りたい方は、コンテストの主催者である写研で作品集を頒布してくれますので、1000円分の切手か為替を同封し下記へ注文してください。
〒170
東京都豊島区南大塚2-26-13
株式会社 写研 企画宣伝部
03-3942-2211(代)
日本語フォントおよび組版に関しましては、適切に議論する場が乏しく私個人として、もっと広範な討議および情報交換を交わす場が、絶対に必要であると思ってまいりました。
このたび、非力な環境ながら自社インターネットサイトを利用し、しかるべくメーリングリストを提供できる体制が整いましたので、それを公開し、皆様のご参加を仰ぎたいと思います。
また、フォント問題については、過去ログを繙くことなく、相当多岐にわたる議論が展開されると予想されますが、メーリングリストシステムのパフォーマンスが許容する限り、適切な分科会へと移行していければ理想的と思います。
当初は、フォントおよび組版をデザイン面から議論する場として
□Font-Design と
それ以外のフォント問題(UnicodeやTTやPostScript等々、等々)を語り合う場として
□Font-General を提供したいと思います。
【呼びかけ】
●購読参加をお願いします
何はなくとも購読者(Subscriber)あってのメーリングリスト(ML)です。
本アーティクル末尾に記述した要項にしたがって、MLへの参加をお願いいたします。
参加資格は不問とします。いろいろな立場からのご参加を歓迎します。
【運営方針】
いまのところ全くオープンです。
何を{ねぼけた|無謀な}というご指摘はごもっともですが、「まぁ、茶でも呑みながら、FONTの話でもすべぇ」という感覚でとりあえずご参加をいただき、議論白熱の折りには別室(新規リスト)を提供していくという方向でいかがでしょうか?
全くの白紙ですから、自己責任において、どのようなご発言をされてもよろしいということでスタートさせていただきたく存じます。
運用中に問題が起これば、逐次紳士的に話し合って形を決めていくということでどうでしょう。
私に関しては、とりあえず場所提供とその管理をさせていただきたく存じます。また、この場所でなくもっと適切な場所への移設という動議が出れば、それに従います。
よくいえばしなやか、悪くいえばあやふやな形での見切り発車ですが、諸事情ご賢察のうえ、広範な皆様のご参加をお願いします!!
メーリングリストを受信したい環境から
listmaster@l-h.co.jp宛に、以下の2行の本文をメールしてください。
(なお、その時タイトルはどのような内容でも構いません。)
sub Font-D<Your Name>
sub Font-G<Your Name>
※"Your Name"は、あなたのローマ字名と置き換えてください。
その場合"<>"は活かしてください。
<<例>>
sub Font-D<Akila Inouye>
sub Font-G<Akila Inouye>
符号化文字集合 (JCS) 調査研究委員会委員長 芝野耕司
今回追加する JIS 漢字コードの拡張文字集合(新JIS漢字コード)は,JIS X 0208の文字集合を補い,JIS X 0208が当初符号化を意図していた,現代日本語を符号化するために十分な文字集合を提供することを目的として設計する。そのため,JIS X 0208と同時に用い,JIS X 0208を補完するものとし,また,現状の使用環境で直ちに実装できるように,第3水準及び第4水準として追加する。
今回の第3水準及び第4水準の追加にあたっては,個々の図形文字の同定のための典拠情報を十分に与えることにより,実際の運用上のあいまいさを生じさせないことに留意した開発を行う。
符号化方法は,JIS X 0208に準じ,JIS X 0208が規定するすべての符号化方法で符号化可能な文字コードの開発を行う。
●背景説明
JIS X0208“情報交換用漢字符号”は,制定以来18年を経過し,現在三回目の改正作業中であり,今年度中に改正版の制定の予定である。
◎文字が足りないことは,どのようにして分かるか
符号化文字集合であるJIS X0208に文字を追加するためには,まず任意の文字がX0208 で表現出来るか否かを明確にする作業,つまり各区点位置の表す文字の同定作業が必須である。
現在進行中のJIS X0208 の改正作業では,すべての区点位置について,その表す文字を再検討し,すべての文字にUCS(ISO/IEC 10646,JIS X0221)に対応するCHARACTER
NAMEを与え,漢字については,更に,字書典拠情報,字体・文字の包摂規準に基づく包摂の有無,現に行なわれている字形の調査,及び可能な限り原典拠に遡った調査を加えて,文字の同定作業を行なっている。
この同定作業によって,JIS X0208 の各区点の表す文字が明確化された。この結果,各区点で表せない 文字も明確になり,現行JIS符号化文字集合である JIS X0201及びJIS X 0208では,現代日本語文の表記に必要な文字でも不足しているものが少なくないことを明らかにできた。
◎足りない文字とは,どのようなものか
現代日本語の表記のために必要でありながら足りない文字とは,例えば次のようなものである。
1. いわゆる“合成文字”
丸付き数字,単位記号,ローマ字の長音記号付きラテン母音字などは,“合 成文字”として生成できると漠然と信じられてきたが,実は生成不可能であった。これらの多くは,メーカー各社がJIS外字として独自に実装しており,情報交換の際の混乱の大きな要因となっている。
2. 教育用の漢字・記号類
高等学校までの教育で用いる文字に関しても,上記のローマ字用ラテン文字,音声記号(発音記号),固有名詞に用いる常用漢字以外の字など,JIS符号化文字集合で表現できない図形文字が存在する。これは,教育分野でのコンピュータ利用の進展に伴って,大きな問題となると思われる。
3. 地名用の漢字
JIS X 0208(C 6226)の第一次規格は,全国の地名漢字をすべて収録することをめざしているが,転記ミス又は典拠資料の誤植などの事故により,若干の遺漏がある。
o JIS幽霊字“椦”
いわゆる“JIS幽霊字”の一つ“椦”(59区91点)は,群馬県前橋市ぬで島町の“ぬで”(木偏に勝の旧字体)を採録しようとして,転記を誤ったものと思われる。 (笹原宏之委員の調査による)。
o JIS幽霊字“妛”
いわゆる“JIS幽霊字”の一つ“妛”(54区12点)は,滋賀県犬上郡多賀 町河内通称あけん原の“あけび”(山の下に女と作る)を,典拠の国土行政 区画総覧の不鮮明な印字に基づいて,誤った字形で採録したものである。(笹原宏之委員の調査による)。
地方自治情報センター及び国土地理協会,国土地理院などでも,百文字程度の不足文字が既に確認されている。
4. 人名用の漢字
JIS X 0208(C 6226)の第一次規格制定時にも,戸籍などの人名処理で必要とされる人名用の漢字を収集しているが,現在では典拠もたどり難く,現行のJIS 符号化文字集合では明らかに不足している。人名用の漢字は,一般の情報処理 においても,住所(地名)と並んで重要な文字であることから,地名と同様 に,徹底した収集が必要である。
●開発の方針
◎符号化
この新JIS漢字コードは,明確にJIS X 0208の図形文字集合拡張と位置付け,更に,現状の使用環境で直ちに実装可能であり,利用可能であることが前提である。従って,現実的に最も制限の多い符号化方法である通称“シフトJIS”に配慮し,最低2000文字の第3水準と,それに更に3000文字を追加する第4水準の二つの水準を設ける。
この二つの水準は,ISOに二つの符号化文字集合として登録するとともに,シフトJIS 及びISO-2022-JP方式による符号化も規定する。
* 注*
現在進行中のJIS X 0208 の改正作業では,シフトJIS及び ISO-2022-JP方式 による符号化を規定する予定である。
◎運用
この新JIS漢字コードは,この規格単独での運用は想定せず,JIS X 0208と同時に用いることのみを規定する。
◎集合の大きさ
拡張する文字数は,下記の領域を満たす数とする。
シフトJIS,中国のGBK及び韓国のUHCのアドレス空間を基本に,1バイト仮名の領域は避けた領域とする。従って,現行各社の独自文字が割り当てられている領域は含む。これで最大5000字程度(第3水準及び第4水準)とする。
◎文字収集の典拠
この新JIS漢字コード拡張用セットに追加する文字には,十分な文字同定のための同定情報あるいは確実な典拠又は頻度情報を必須とし,こうした同定用の情報を欠く文字は追加しない。同定用の情報のない単なる文字表は典拠としない。但し,こうした文字表中の文字でも,典拠及び頻度情報が得られる場合は,考慮する。
・文字収集の典拠及びそこから追加される文字の例
1. 一般に広く使われている用字用語集 (例えば,“公用文の書き方”,一般に市販されている新聞などの用字用語集)で使われている記号類
2. 高校までの教育で必要とされる漢字・記号類。
3. 日米欧の3極協調を考慮し,アクセント付きラテン文字など。
4. 地名用の漢字の内,郵政省,地方自治情報センター,国土地理協会及び国土地理院などから提供された,明確な地名典拠と読みのある地名漢字。
5. 人名用の漢字の内,典拠及び一次資料での頻度情報が得られる,法務省戸籍用漢字(約1000字) 及びNTT人名用外字(約5300文字)を基本とし,ここから法務省の基準である,何らかの典拠字書類に出現し誤字又は訛字とされていない漢字を対象に,JIS X 0208の包摂基準を勘案して追加する漢字を検討する。
6. UCSに対して,日本から漢字拡張として提案している漢字。
7. JIS X0212 及び JIS X0221に含まれる文字であっても,あえて重複符号化を行う。
8. JIS X0221に含まれない文字を追加する場合は,更にUCSに追加提案を行う。
●開発期間
開発期間は2年間とする。
コメント・要望送付先
この新規格開発についてのコメント又は要望は,氏名,所属,連絡先(電話, ファックス,住所,電子メールアドレス),コメント又は要望を明記の上,上記事務局又はjisx0208@tiu.ac.jpまでお寄せください。
無料で自由に使用して構わないのが、フリーウエア。
使用してみて気に入ったら、作者が決めた何らかの使用料を払うのがシェアウエア。
小さな単機能のユーティリティから、商品として売られているものよりスグレ物の高機能なアプリケーションソフトまで、世界中で作られ、その数は何万点あるのか誰にも判らない。
制作者も、プログラムを勉強し始めたアマチュアからプロフェッショナルなプログラマーまで千差万別だ。それらの様々なソフトウエアは、作者の責任で制作・配付されている。
フォントに関しても、フリー&シェアウエアが数多くあり(特に欧文書体は字数が少なく、文字構成エレメントが単純で、フォント作成ソフトが充実しているので作り易い)、パソコン雑誌などでも紹介されたりしている。
しかし、その実態はどんなものかというと、大体90%は書体制作者に無断でフォント化されたものだと思う。
僅かにオリジナリティが感じられるものも存在するが、そういうフォントは面白いカタチはしているが、書体デザインの品質が低く殆んど使い物にはならない。
無断でフォント化とは、どういうことか?
パソコンで使いたい書体が、フォントとして製品化されていないので不便だ。だから、仕方なく書体サンプルなどを原稿にパソコン上でトレースしフォントを作ってしまう。
ここまでは許されると思う(これは音楽を、放送やCDなどからカセットテープに録音するのと同じ行為)。
しかし、作ったフォントを個人レベルで使用するのなら問題はないのだが、これを配付したり商売にしてはいけない!(CDやカセットテープにも小さく表記してありますよね)
このような行為を「アナログの原稿をデジタル化した時、そのデータ作成者に新たに権利が発生するから問題ない」などと乱暴な意見をいう人もいるが、とんでもない!と思う。
たとえば、赤川次郎の小説を無断でテキストデータにした人に、出版の権利が発生したら変だ。テキストデータにする作業には何らかの価値(仕事として受注したのなら報酬を貰うなどの)はあると思うが、それ以上の物ではない筈だ。
今回なぜ、こんな内容になったかというと、私がデザインし1982年にアメリカのVGCという会社から販売されている「Paper Clip」という書体が、私に無断でフォント化され配付されているからだ。
気づいたのは2年前。インプレスから販売されている「TrueType スーパーフォントコレクション for Windows」というCD-ROM添付本で、自分の書体を見つけた。
中には、オリジナルのPaper Clipをそのままフォント化したと思われるもの、それを少し太らせたもの、斜体にしたり横幅を広くしたり、全部で7書体がPaper Clipという名前で収録されている。
このCD-ROMは、米国で出回っているフリー&シェアウエアのフォント4500書体を、GROUPWARE社が収録し販売しているものだが、フリー&シェアウエアの性格上、このCD-ROM販売業者には何の責任も生じないのだ。
印刷されている内容サンプルをみると収録されているフォントは前述のように、アナログの写植やインスタントレタリングなどで見慣れた書体が殆どである。無断でフォント化された書体の権利保有者にとっては、対処に困るフリー&シェアウエア集なのだ。
この本のまえがきに「本書は、できるだけ多くの欧文TrueTypeフォントを、可能な限り安く読者のみなさまに提供できれば、という趣旨で作成いたしました」「本書により、読者の皆さんのフォントライブラリーが充実し、表現力豊かなドキュメント作成に役立てば幸いです」と記してあるが、そのために多くの書体権利保有者が犠牲になっているのを知って欲しい。
この手の書体商品を購入して利用している人達は、収録されているフォントの大部分がオリジナル作者に無断で作られた海賊版フォントだと認識してから使用してください。
リコーTrueTypeWorld全書体が収容されたCD-ROMを15000円で販売し、その中から自由に選んだ5書体のみがインストールできるらしい。インストールの手順は、
(1)
専用プログラム(添付フロッピーディスク)を起動し、希望書体を選択すると
(2)
自動的にNTTテレマーケティングセンターに電話回線を接続しプロテクト解除キーを取得
(3)
CD-ROMのプロテクトが解除され、選択した書体をパソコンにインストール
となるらしい。モデムが無かったら何もできないじゃないか!しかも解除キーの有効期限もあるらしい。
なぜこんな煩わしい手順にしなければならないのか?
他社のフォントデータCD-ROMとインストール用FDを組み合わせた商品(これらも当然プリペイドだが)では、解除キーなどを得なくても、好きな書体を1書体だけインストールとか3書体インストールとかが可能だ。この場合、添付されるインストール用FD自体が1書体だけとか3書体だけインストール可能な仕組みにしてある。
なぜ電話をかけて書体毎の解除キーを得なければならないのか考えて見た。
たぶんリコーは、客がどの書体をインストールしたか知りたいのだ。これは書体の人気とかを調査する目的ではなく、書体の権利保有者(社)に販売数に応じてロイヤリティを支払うため、各書体毎の明確なインストール数が必要なのだ。
それでは前記の他のメーカーはどうしているのか。
書体選択方式の場合、通常はユーザ登録カードに記入し、返送されたデータがロイヤリティの算出に使わている。しかしインストールした書体をきちんと記入していなかったり、登録カード自体も半数程度しか送られてこないらしい。そうすると正確なロイヤリティの計算ができず、支払う側・受け取る側どちらにも、何らかの不満が残ってしまう。
リコーはこの部分をはっきりさせるために、こんな方式を選択したのだろう。
パソコン通信やインターネットを楽しんでいる人達と、フォントを購入する人達がうまく重複していれば、この方式は成功するかもしれない。しかし、使う側になってみるとやっぱり面倒だ…。
皆さん、書体製品のユーザ登録カードは正しく記入し返送しましょう!
以下は製品説明文から
いわば、プリペイドのフォントセット商品です。取りあえずフォントは購入したいが、店頭では数多い中から短時間に決められないというような場合でも、後でじっくりと時間をかけて、TrueTypeWorld全書体の中から1書体づつ、Max5書体まで選択できます。キー付きCD新システム「TTWフルチョイス5 Ver.1」
(株)リコー フォント開発センター
TEL. 045-477-1636 担当 高田
FAX. 045-477-1640
6月某日、採点会場へ行き朝から晩まで他の採点委員の人達と、全国から集められた答案の採点作業をする。
採点委員は皆レタリング歴が長く、それぞれの経験で微妙に判断基準が違うので、評価レベルを合わせるのに苦労し、美的感覚の必要な技術に、第三者が点数を付けるのはムズカしいものだと毎年感じてしまう。そろそろ採点委員のヤメどきなのかも知れない?
そんな採点作業とは別に、このレタリング技能検定のことを私なりに考えて見た。
毎年約2万人の人達がこの検定を受験する。若い人達は資格にとても興味があり、特に就職活動に有利になりそうだと、この種の検定試験を受けるらしく、昨年のデータでは96%が学生だ。
採点作業中の雑談で、こんなに受験者がいるなら、レタリング検定塾を作り、1級取得まで責任指導!とやれば成功するんじゃないか、などと冗談もでた。
アンケートによる受験者の目標は
1級 プロ・デザイナー(特にレタリング)
2級 プロ・デザイナー志願者(アシスタントデザイナー)
3級 学校・職場でのレタリング特技者
4級 初心者、学生などレタリングに興味がある
となっていて、実技試験では、鉛筆・サインペン\筆・三角定規・墨・ポスターカラーなどを使い、ケント紙に課題を描く。
結果的に受験者の50%程度が資格を得られるのだが、レタリング技術を活かす場が現実にあるのだろうか?
ワープロ・パソコン用の書体が色々と開発販売され、自由なサイズや色彩で簡単に何枚でもプリントできるし、看板屋さんも最近はコンピュータを利用したシステムを使用している。
デザイン・印刷業界でも、写植機メーカーが書体開発を多様化しはじめた頃からレタリングが不用になり、製品名や企業名ロゴタイプなど、わずかに需要が残っているだけだ。
上記のような道具を使ってレタリングする必要が無い時代になってしまったのだ。
小売店などでのPOP(point of purchase)広告もパソコンからのカラー出力が目につくし、昔からのプロデザイナー達も仕事が減り休業状態の人が多いらしい…。
私はレタリングを、就職のための技術とか、稼げる技術と捉えるよりも、これからは、趣味のアートとして楽しむ方向にもっていったほうが良いと思う。
発注者の指示原稿を一生懸命レタリングして報酬を得るのではなく、ゆとりある生活の中で、お茶やお花のように、趣味として楽しむ文字デザイン。
好きな素材や色を自由に使って思うままに創作し、時には知人のお祝いにキレイなレタリングアートをパネルにしてプレゼントする。そんなレタリングの通信教育や学校が、そろそろ現われて欲しい。